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東日本大震災特別寄稿―新たなまちづくりへ― 

広域都市計画の視点が課題 ~軸状分散連携型コンパクトシティーの提案
                               北海商科大学大学院教授 安藤 昭
 
 近年,我々は多くの危機に直面している.地球生態系保全の危機,社会規範崩壊の危機,社会組織溶解の危機,そして個人の心の空洞化をもたらす高度情報社会の危機がこれである.そのため,人間とそのありようの総体を「都市デザイン」という一貫した視座の下で捉えたいという欲求が今ほど強く抱かれる時はない。そのためのポストモダーンの都市デザインの基本コンセプトは「近代化の修復にある」といっても過言では無いであろう。
 言うまでもなく、都市デザインの要諦は計画対象都市の将来人口を推計し、将来の産業構造を想定して、土地利用の計画・設計を策定することである。然るに、平成17年7月7日現在と平成18年4月1日現在の日本の人口データー(住民基本台帳人口)を基に、近年の都市人口の増減の特徴を検討すると、首都圏人口の人口爆発が著しいことに加え、人口6万~7万人の都市62都市の43%が人口減少であるのに対して、人口5万~6万人の都市78都市の64%が、人口2万3千~5万人の都市21都市の95%が人口減少を呈していることである。このような中で、平成17年7月7日現在の岩手県沿岸域の主要都市の人口規模は宮古市(6万2千人)、釜石市(4万5千人)、大船渡市(4万4千人)、陸前高田市(2万6千人)となっており、4市を合計しても17万6千人程度であり、特例市の条件である人口20万人にも満たない状況にある。
 そのため、少子高齢化地域である岩手県沿岸域の50年から100年先の将来を見据えた「新たなまちづくり」のためには、この点を十分認識し、第一に、三陸鉄道南リアス線・JR山田線と三陸縦貫自動車道を早急かつ抜本的に整備し、既述の沿岸主要都市相互間の走行距離が1時間圏程度の「軸状分散連携型コンパクトシティ」の都市を構築することを提案したい。加えて、東北新幹線・三陸鉄道北リアス線及び沿岸航路とのネットワーク化を積極的に図ることも必要である。その結果、当地域の都市相互の機能分担が促されるとともに、都市機能の再体制化(再構築)がなされ、特例市に相当する潜在力と駆動力を発揮することが期待されるからである。
 第二に必要なことは、沿岸主要都市及び主要都市間に散在する町村の住民の生活と生存を保障する機能を都市という集住形態の文化秩序としてまとめることである。現在は平成の市町村大合併(市町村合併特例法の施行:平成7年~平成17年)から間も無く、しかも、大震災という非常時であるため、住民の合意形成にはある程度の時間が必要であることを念頭におきながら、以下に、ひとつの『都市デザインの現代的な方法』(図―1)について述べる。
都市デザインの現代的な方法
 まず、岩手県沿岸域における大震災後の様々な問題を含むありのままの都市の情況について、図―1の上段に示された「解釈モデル」の4つの視角から、つまり都市の1.生物的環境(客観的)、2.インフラ機能空間(間客観的)、3.文化現象としての景観(間主観的)、4.心理現象としての景観(主観的)の視点から、地域住民、NPO,専門家、民間企業及び行政等との切磋琢磨した議論を通して、現状の問題点を浮き彫りにし、対象都市の計画・設計の目指すべき方向性、理念(目標)を設定することである。
 ここでは、大震災後の、生物多様性の視点からの植物、動物(鳥類、獣類、虫類、魚類)に対する生態系の科学的調査、津波防災計画及び沿岸域特有の谷地形の土地利用秩序の検討、アーバン・インフラストラクチャー(都市の骨格的施設)デザインからの検討、(人間の価値体系の鏡である)歴史と伝統文化を蓄積するための持続可能なまちづくりからの検討、個性的で美しく潤いのある景観デザインと近代化に伴う人間の心の空洞化の修復と大きく関わる観光まちづくりからの検討は必須である。
 次いで、実際の都市の計画・設計において必要となる情報の収集を行い、都市及び地区の特性を明らかにし、都市のデザインテーマを決定することである。 
 そして、地区特性と都市のデザインテーマを基調に、図―1の下段に示された「デザインモデル」に従って、つまり、都市全体のあり方を規定するマクロ構造に関するデザインと地区の公共施設、街路、オ-プンスペースや宅地、建築物等のつくり出す空間の意匠や形態のデザインに関するミクロ構造のデザインの2つの局面の都市景観に対して、感性的及び理性的の2つの段階から接近し、これを統合する必要がある。いわば、都市はデザインモデルに示されるⅠ~Ⅳの4つの段階を通して重層的にデザインされることによって再体制化(再構築)されるといえる。
 ここでは、都市再構築のシナリオとして、生態象徴(エコ・シンボル)的秩序の形成と自然との共生社会の復元・再生の意味涵養のための風土イメージの調査、及び調査結果を踏まえた環境アセスメント、街路パターン(軸状、梯子状、帯状等)と街路のデザイン[自転車道の整備、津波避難路の設計(平面分離か立体分離か)、津波避難路の総合サインのデザイン等]、津波避難を念頭においた土地や建物の配置と形態に関する空間と景観のデザイン、行政施設、文化施設(大震災の記憶の保存と都市の復興拠点施設となる津波博物館他)及びスポーツ施設の計画と設計、地域振興効果において極めて性格の異なる「道の駅」と「エコミュージアム」を統合する中小都市の核心の再生、徒歩を基本とするコミュニテイーアクティビテイプラン、波の音、潮の香り、住民の人情味、親切心などの安らぎ感とアメニテイ(環境の快適性)のデザイン、広域国際交流圏形成のためのリアス・シーライナーの早期の整備拡充が指摘される。
 以上のような、地域連携軸の形成と都市の「解釈モデル」と「デザインモデル」からの検討を踏まえた“新たなまちづくり”を展開することこそが、現在直面する多くの危機を克服し近代化の修復に繋がる持続可能なまちづくりになるといえよう。
 
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