スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『古い街並と若い人の想い(提出されたレポートから』 リレーコラム第50回 

                               岩手大学教授 藁谷収
 私の勤務する大学で「造形表現の指導」という科目の授業を4月から行っている。美術科の学生対象で演習授業である。制作の根拠を机上ではなく、街を歩き新たな出会いの中で、制作イメージを膨らませて行くことを求めている。課題としては盛岡の古い造形物、建物、神社仏閣を中心に調査し、残って行くもの、忘れ去られて行くものに、自分なりの想いを馳せレポートを提出。可能であれば自らの制作の糸口を辿ってみてほしいというものである。4月から歩き始めたコースは、高松の池の神庭山にある横川省三の台座を見ながら、南部藩の菩提寺を下り、北山報恩寺にて横川省三像原型に度肝を抜かれる。そして、五百羅漢でマルコポーロ、フビライハンに謁見する。さんさ踊りの三石神社と、名前に引かれ遭遇したムカデ姫の墓。中津川の川縁を歩き、初めて立つ川の合流点。6月になって北上川を下り、明治橋から昔の賑わいの惣門跡、鉈屋町と授業を進めて来た。今回の鉈屋町界隈のキーワードは水と石である。どんな出会いが待っているか楽しみである。受講生秋田県能代市出身の2年生大山奥人君のレポートの一部を紹介します。

*******************************
鉈屋町界隈のレポート
岩手大学教育学部芸術文化課程2年 大山奥人

 盛岡市鉈屋町の特徴として、町家のもつ歴史的な風情が感じられる所である。
町家における建築物の種類は様々で、豆腐屋や蕎麦屋、いくつもの酒蔵に昔からの酒場、麹屋や鍛冶屋等があり、当時の雰囲気がそのまま残っていて町家ならではの暮らし文化が根付いているのが伺えた。その他にも盛岡城の名残を感じさせる惣門跡や、昔から界隈の人々に利用され続けてきた大慈清水、歴史的な建築物や文化的な営みを感じさせるものが多く、町家も含めて盛岡に根付いている先人たちの生活臭というものが感じられた。また鉈屋町において、「盛岡まち並み塾」という盛岡の歴史的生活環境、建築、そして地域に根ざした生活の知恵を学び、人々に伝承させる活動をしている団体があり、定期的なシンポジウムや訪問見学会の開催や、まちづくりの計画発案や作成、研究、盛岡町家における歴史的生活環境の啓蒙などを行っている。
今、新たなるものが開発されて古いものの影が薄くなりゆく状況において、鉈屋町はその風潮をまるでかき消すかのように歴史的な風情を感じさせる町並みを残し、今も昔も変わらぬ生活環境を築いているのは、鉈屋町界隈に住む人々がこの町並みを持続してきたことに他ならないのでは、と感じた。今回は鉈屋町のほかに大慈寺町近辺にも足を運び、町一帯の寺院群にも訪問した。
この界隈一帯はおおよそ10もの様々な寺院が立ち並んでおり、総理大臣の原敬、米内光政が奉られている大慈寺や円光寺、幽霊の絵がある永泉寺、彫刻作品のある祇陀寺など、多種多様である。また、今は無き宗龍寺には十六羅漢像が置かれており、現在は五智如来像を含め21体の石仏が羅漢公園に見守られているかのように設置されてある。この十六羅漢は四大飢饉(元禄、宝暦、天明、天保)における大凶作による餓死者への供養として建立された。
総理大臣の墓や重要文化財が残されている寺院群のある町並みからは、前述したように鉈屋町や大慈寺町界隈の風情や景観を作り上げていると感じた。例えば十六羅漢像が置かれてある場は公園で、いわゆる市民の憩いの場的存在に重要文化財の彫刻作品が置かれてあることは、その町の対象、シンボルとしてふさわしい。私事であるが、前回の調査で行った報恩寺の近辺も盛岡の寺院群ではあったが、鉈屋町近辺と中央通り近辺の違いからか、2つの寺院群では雰囲気の違いを感じた。盛岡の主要な発展を遂げている県庁付近に位置する名須川町と比較して、歴史的、文化的な町家がある鉈屋町近辺の寺院群は、その風情を壊すことがなく治まっている雰囲気があると思った。また、入り組んだ路地が多いことで報恩寺がある道路沿いの寺院群とは違った表情を持った寺院群であるとも感じた。
参照文献
【まちあるき~盛岡】
http://www2.koutaro.name/machi/morioka.htm
【盛岡町屋と盛岡まち並み塾~「コミュニティカフェ・cafeマイスター養成」プロジェクト】
http://www.e-etown.com/project/report/morioka.html
【盛岡まち並み塾】
http://www.geocities.jp/moriokamatinamijuku/
鉈
鉈屋町界隈(撮影大山奥人)

大慈寺
黄檗宗大慈寺山門(撮影大山奥人)

**********************************

このレポートに、50数年ここで暮らし続けて来た私とは、もちろん違った見方をもち、そして確かな分析力を感じる。これを期に様々な出会いと、悩みを抱えながら、どんな表現の提案が出てくるか期待したい。鉈屋町は水の町、二つの清水に時の流れに耐え残った空間が息づいている。今年も暑いお盆の夕暮れに、ふなっこ流しの揺れる炎の季節がもうすぐである。
50回


スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。